
2026.10.09 文・川崎 誠
改葬の記事で「お墓に何人分の遺骨があるか分からない」というつまずきを書きました。その答えの多くは、墓誌に刻んであります。
この記事では、墓誌とは何か、何が刻まれているか、読み方、墓誌がないお墓での調べ方、記録しておくとよいことをまとめました。
墓誌とは
墓誌は、そのお墓に納められた人の名前や没年月日を刻んだ石の板です。墓石の横や後ろに、縦長または横長の板として立っています。「霊標」「法名碑」「戒名板」と呼ぶ地域や宗派もあります。
昔は墓石そのものに一人ひとりの名前を刻んでいましたが、家ごとの「◯◯家之墓」が広まるにつれ、名前を別の板にまとめるようになりました。古いお墓では、墓石の側面や裏面に名前が刻まれていて、墓誌がないこともあります。
何が刻まれているか
一人につき、だいたい次の四つが刻まれています。①戒名(法名・法号):仏教でつけられる名前。宗派によって文字数や使う字が違います。②俗名:生前の名前。③没年月日:亡くなった日。元号で刻まれることが多い。④享年(行年):亡くなった年齢。「享年八十七」「行年八十七才」のように書きます。
右から左へ、亡くなった順に刻まれているのが基本です。ただ、夫婦を並べる、先に建てた人の分だけ古い字体、途中から刻み方が変わる、ということもよくあります。
神道のお墓では戒名ではなく「◯◯命(みこと)」という霊号が、キリスト教では洗礼名が刻まれます。
正面の文字の意味
墓石の正面には「◯◯家之墓」「先祖代々之墓」のほか、宗派の言葉が刻まれていることがあります。
「倶会一処(くえいっしょ)」は浄土真宗や浄土宗でよく見る言葉で、「ともに一つの場所(極楽浄土)で会う」という意味です。「南無阿弥陀仏」も浄土系、「南無妙法蓮華経」は日蓮宗、「空」や「◯」の一文字は禅宗に多く見られます。
正面の文字は、そのお墓の宗派を知る手がかりになります。改葬や法要でお寺を探すとき、「正面に何と書いてあるか」を伝えると話が早いです。
読めない字があるとき
古い墓誌は、旧字体やくずし字で読めないことがあります。読み方のコツは三つ。
①写真を撮って、拡大して読む。斜めから光を当てると彫りの影が出て読みやすくなります。濡らすと一時的に文字が浮きます(水をかけてよいお墓かは「お墓に水をかける意味」の記事を参照)。
②元号と年齢から逆算する。「明治三十五年」「享年六十二」なら、生まれは天保十一年ごろ、と計算できます。誰の親か見当がつきます。
③お寺に聞く。お寺には「過去帳」という、檀家の亡くなった人の記録があります。墓誌が読めなくても、過去帳で分かることがほとんどです。
墓誌がないお墓で、誰が入っているか調べる
墓誌がない、または墓誌にない人も入っていそうなときの手がかりです。
①墓石の側面と裏面:古いお墓は墓石そのものに名前が刻まれています。②お寺の過去帳:檀家であれば最も確実な記録。③霊園の台帳:公営・民営の霊園は納骨のたびに届け出があり、台帳に残っています。管理事務所で「使用者」であれば見られます。④納骨室(カロート)を開ける:骨壺の数と、壺に書かれた名前で確かめます。石材店に頼むか、自分で開けられる構造なら家族で。⑤親戚の記憶と古い写真:法事の写真や香典帳が残っていることがあります。
改葬のときは、この結果を「埋蔵証明書」の人数と合わせる必要があります。先に調べておくと、申請がスムーズです。
記録しておくとよいこと
墓誌は、家の記録そのものです。一度、全員分を書き写しておくと、名義の引き継ぎ、法要の日取り、改葬のどれにも使えます。
書き写すのは、戒名・俗名・没年月日・享年の四つと、刻まれている順番。スマホで墓誌全体の写真を一枚、一人ずつ寄った写真を一枚ずつ撮っておくと、あとで読み直せます。
新しく名前を刻むときは、石材店に頼みます。費用は1人3万〜5万円が目安で、現地で彫る場合と、板を外して工場で彫る場合があります。四十九日や一周忌の前に頼む家が多いですが、決まりはありません。
つなぐのお参りでは
つなぐは広島県内のお墓へ伺い、清掃とお供えをしたうえで、ビデオ通話でご家族とご一緒にお参りする会社です。お参りの際に、墓誌や墓石の側面を全体と寄りで撮影してお届けすることができます。「誰が入っているか知りたい」「改葬や承継の前に記録を残したい」というご家族に、お参りの一回でそのまま役立つ形です。読めない字の読み取りや戒名の意味の調べは、ご家族とお寺の間のことですが、「どこを撮れば読めるか」は心得ています。
よくある質問
問:墓誌に刻まれていない人も入っていますか。——答:あります。刻む費用を省いた、刻む前に代替わりした、という家は珍しくありません。墓誌は目安で、確実なのは過去帳と納骨室です。
問:墓誌の名前を消したり直したりできますか。——答:できます。誤字の修正や、改葬で移した人の名前を削る加工を石材店に頼めます。費用は内容によります。
問:生前に自分の名前を刻めますか。——答:できます。生前に刻む場合は文字を朱色にして、亡くなったあとに朱を落とす習わしがあります。
まとめ
墓誌はお墓に入っている人の名前と没年月日を刻んだ板。戒名・俗名・没年月日・享年が、亡くなった順に刻まれている。正面の言葉は宗派の手がかり。読めない字は写真と光、逆算、お寺の過去帳で。墓誌がなければ墓石の側面、霊園の台帳、納骨室で確かめる。一度全員分を書き写しておくと、承継にも改葬にも使える。
墓誌を読むことは、家の来た道を読むことです。次にお参りするときは、一度、名前を端から読んでみてください。