
2026.10.08 文・川崎 誠
しまう・移す記事を書きながら、ずっと思っていたことがあります。相談に来る方の多くは、最初から墓じまいをしたいわけではなく、「どうすれば残せるか」を知りたいのだ、ということです。
この記事では、遠くのお墓を残すと決めた家族が、無理なく続けるために決めておきたいことをまとめました。
「残す」は、何もしないことではない
お墓を残すというのは、いまのまま放っておくことではありません。年に一度でも誰かが行き、管理費を払い、荒れていないかを見る。その「誰か」と「いつ」と「お金」を決めておくことが、残すということです。
決めずにいると、最初の数年は何となく続きますが、親が行けなくなった年、兄弟の誰かが遠くへ引っ越した年に、ぷつりと途切れます。途切れてから数年たつと、草に埋もれ、管理費の督促が来て、そこから「どうしよう」が始まります。
先に決めておけば、途切れません。決めることは四つです。
決めること① 年に何回、誰が行くか
回数は、年1回でも構いません。お盆、お彼岸、命日、年末のうち、家族が集まりやすい一つを「必ず行く日」にします。それ以外は行けたら行く、で十分です。
誰が行くかは、「できる人が行く」ではなく、名前を決めます。長男が行く、今年は妹、来年は弟、と交代でもよい。決めてあれば、行けない年に「代わりを頼む」という発想が出ます。決めていないと、誰も行かない年が「誰のせいでもなく」できてしまいます。
決めること② お金は年にいくらか、誰が払うか
年間管理費:お寺の墓地で5千〜2万円、霊園で5千〜1万5千円が目安。護持会費や寄付のお願いが別に来るお寺もあります。
交通費:遠方なら、一回の帰省で1人2万〜5万円。家族で行けばその人数分です。
掃除や供花:自分で行けば花代と線香代で2千〜5千円。頼むなら、お墓参りをご一緒するサービスや掃除の代行で1回1万〜2万円が目安です。
合計すると、年に3万〜10万円くらいの幅です。この金額を、誰が払うか(名義人が払う、兄弟で割る、親が生きているうちは親)を決めておきます。管理費だけは、口座振替にして「払い忘れ」をなくすのがいちばん確実です。
決めること③ 行けない年にどうするか
必ず、行けない年が来ます。病気、仕事、子どもの受験、親の介護。そのときに「今年は仕方ない」で終わらせず、代わりの手を先に決めておきます。
近くの親戚に掃除だけ頼む(頼み方は「近くの親戚にお墓の掃除を頼むとき」の記事に)。お寺に供花と見回りをお願いする。お墓参りをご一緒するサービスに頼んで、ビデオ通話で手を合わせる。どれでもよいので、「行けないときはこれ」を一つ決めておくと、続きます。
決めること④ 誰が引き継ぐか
いまの名義人が亡くなったあと、誰が名義を継ぐかです。名義の引き継ぎは「親が亡くなった後のお墓」の記事に書きました。ここで大事なのは、継ぐ人を本人の了解のもとで決めておくことです。
「長男だから当然」と周りが思っていても、本人は遠くに住んでいて、行く気がないかもしれません。その場合は、行ける人が継ぐ、または継ぐ人は名前だけで実際のお参りは別の人が担う、という分け方もあります。話し合いは、親が元気なうちに、親を交えてするのがいちばん穏やかです。
荒れる前のサイン
残すと決めたお墓が荒れていくときには、順番があります。①花立ての花が枯れたまま数か月。②区画の中に草が生え、隣の区画との境が分からなくなる。③墓石に苔や黒ずみが広がる。④管理費の督促が届く。⑤墓地の管理者から「連絡がつかない」と親戚に電話が来る。
①と②の段階で手を打てば、掃除一回で元に戻ります。③以降は石材店や専門の掃除が必要になり、費用も上がります。年に一度、写真で状態を見るだけでも、①②の段階で気づけます。
頼れる先
近くの親戚:掃除と見回りを、年に一度、お礼つきで頼む。
お寺や霊園の管理者:供花や見回りのサービスがある墓地があります。管理費の払い方の相談も。
石材店:墓石の傾き、ひび、文字の彫り足し。年に一度の点検を頼める店もあります。
お墓参りをご一緒するサービス:遠方の家族の代わりに現地へ行き、掃除とお供えをして、ビデオ通話や写真で様子を伝える。つなぐはこの形です。
どれか一つに頼りきるより、「親戚に年1回、サービスに年1回、自分たちで年1回」のように組み合わせると、誰かが動けなくなっても途切れません。
つなぐのお参りでは
つなぐは広島県内のお墓へ伺い、清掃とお供えをしたうえで、ビデオ通話でご家族とご一緒にお参りする会社です。「残す」と決めたご家族には、行けない年の一回、あるいは年に一度の「状態を見る」一回として、お使いいただけます。お参りのあとは、当日の写真を添えた紙のご報告をお送りしますので、ご家族で「今年のお墓」を共有する材料にもなります。
よくある質問
問:年1回では少なすぎませんか。——答:少なくありません。年1回を10年続けるほうが、年3回を2年で止めるより、お墓はきれいに保たれます。
問:管理費を払っていれば、掃除はしてもらえますか。——答:多くの墓地では、管理費は通路や水道など共用部分の維持に使われ、各区画の掃除は含まれません。区画の中は家族の責任です。
問:いつか墓じまいするかもしれません。それでも残す決め方は必要ですか。——答:必要です。墓じまいを決めるまでの数年間、お墓が荒れていれば、片づけの費用も気持ちの負担も大きくなります。残す間はきちんと残す、が結局いちばん楽です。
まとめ
遠くのお墓を残すと決めたら、決めることは四つ。年に何回・誰が行くか、お金は年いくらで誰が払うか、行けない年はどうするか、誰が引き継ぐか。年の費用は3万〜10万円が目安。荒れるサインは枯れた花と草で、早ければ掃除一回で戻る。頼れる先は親戚・お寺・石材店・お参りをご一緒するサービスで、組み合わせると途切れない。
残すと決めたなら、残し方も決める。それだけで、お墓は何十年でも続きます。