
2026.10.24 文・川崎 誠
コラムでは、毎年きちんと通う前提の話を多く書いてきました。でも実際には、何年も行けなかったお墓に、久しぶりに行く方のほうが多いのかもしれません。今日は、その最初の一日の話です。
最初に、全体を見る
着いたら、まず手を合わせて一礼。それから、掃除の前の全体を写真に一枚撮ります。荒れた姿を撮るのは気が進まないかもしれませんが、あとで「ここまで戻せた」と分かる一枚になり、家族に見せる材料にもなります。
次に、どこが荒れているかを見ます。①草(区画の中・石のすき間)、②落ち葉とゴミ、③花立てと水鉢の中、④墓石の汚れ(苔・黒ずみ・水垢)、⑤傷み(傾き・ひび・外柵のずれ)。⑤は掃除では直らないので、写真だけ撮っておきます(「お墓の傷みのサイン」の記事)。
最初の30分でやること
順番は、上からではなく「下から、外から」です。①区画の中と外柵の周りの草を抜く。石のすき間の草は、根ごと抜けなくても地面ぎりぎりで切れば見た目は戻ります。②落ち葉とゴミを集めて袋へ。③花立てと水鉢の中を空にする。古い水が腐ってヘドロのようになっていることが多いので、ゴム手袋で。
この三つだけで、お墓の印象はがらりと変わります。墓石を磨くのは、そのあとです。
次の30分:墓石と小物
墓石は、上から水をかけて流し(水をかけない宗派なら、濡らした布で)、柔らかいスポンジで拭きます。文字の彫りの中は歯ブラシで。強い洗剤や金属たわしは使いません。石が傷み、かえって汚れが付きやすくなります。
花立ては、中にブラシを入れて洗います。細長い瓶洗いブラシがあると楽です。香炉は灰を捨て、水鉢は水を替えて拭きます。
最後に、花と線香を供えて手を合わせます。ここまでで、だいたい1時間から1時間半です。
一日では戻らないもの
長年の苔や黒ずみ、石に染みた水垢は、一度では落ちません。無理にこすると石を傷めます。今日は「目立つところだけ」にして、次の機会か、専用の洗浄を石材店に頼みます(「お墓の苔の落とし方」の記事)。
根の深い雑草や、区画に根を張った木の苗も、一日では片づきません。防草シートや砂利を敷くかどうかは、墓地の決まりを確かめてから、別の日に考えます。
傾きやひび、目地のはがれは掃除では直りません。写真を撮って、石材店に見てもらう段取りにします。
持っていくと助かる道具
軍手とゴム手袋、草取り用の小さな鎌かスコップ、ゴミ袋を多め(落ち葉と草で2〜3袋になります)、柔らかいスポンジ、歯ブラシ、細長いブラシ、ぞうきん数枚、ペットボトルの水(墓地の水道が遠い・止まっている場合)。
荒れたお墓の一回目は、いつもより道具が要ります。二回目からは、いつもの持ち物で足ります(「お墓参りの持ち物リスト」の記事)。
自分を責めないこと
荒れたお墓を前にすると、多くの方が「申し訳ない」と言います。でも、遠くに住んでいる、仕事や介護で手が離せない、行けなかった理由はどの家にもあります。来られなかった年月より、今日ここに来たことのほうが大切です。
そして、次をどうするかを、帰る前に決めておきます。年に一度は来る、来られない年は誰かに頼む。「遠くのお墓を残すと決めたら」の記事に、その決め方を書きました。
つなぐのお参りでは
つなぐは広島県内のお墓へ伺い、清掃とお供えをしたうえで、ビデオ通話でご家族とご一緒にお参りする会社です。久しぶりに行くお墓の「一回目の掃除」を先にお引き受けし、ご家族が帰省されたときには、きれいになったお墓で手を合わせていただく形もできます。掃除の前と後の写真もお届けします。長年の汚れや傷みは、状態をお伝えしたうえで、石材店への相談の材料にしていただけます。
よくある質問
問:除草剤を使ってもいいですか。——答:墓地によっては禁止されています。使える場合も、石に直接かかると変色することがあります。まず墓地の管理者に確かめてください(「お彼岸前のお墓の草取り」の記事)。
問:花立てが割れていました。——答:花立ては取り替えられます。応急には、ペットボトルを切って差し込む方法もあります(「花立て・水鉢・香炉が壊れたら」の記事)。
問:一人で行っても一日で終わりますか。——答:草と落ち葉と花立てまでなら、一人でも1時間ほどです。墓石の磨きまで含めると2時間ほど。二人いれば半分です。
まとめ
荒れたお墓は、まず一礼して全体を撮る。最初の30分で草・落ち葉・花立ての中を片づけ、次の30分で墓石と小物を拭く。苔や水垢、傷みは一日では戻らないので、写真に残して次につなげる。道具は多めに。来られなかった年月を責めず、次に来る日を決めて帰る。
お墓は、手をかければ必ず応えてくれます。今日の一回が、また通いはじめる一回目です。