
2026.10.07 文・川崎 誠
墓じまい、永代供養、納骨堂、樹木葬と書いてきて、どの記事にも出てきたのが「改葬」という言葉です。移す先の話は書きましたが、「移す手続きそのもの」はまとめていませんでした。
この記事では、改葬とは何か、必要な書類と順番、費用の目安、よくあるつまずきをまとめました。
改葬とは
改葬とは、埋葬した遺骨を別の場所に移すことです。墓地埋葬法という法律で定められていて、いまのお墓がある市区町村の許可(改葬許可証)が必要です。許可なく遺骨を掘り出して運ぶことはできません。
「墓じまい」は、いまのお墓を片づけて更地に戻すことまでを指す言葉で、改葬はその中の「遺骨を移す」部分です。お墓を残したまま一部の遺骨だけ移す(分骨して移す)場合も改葬にあたります。
移す先は、新しいお墓、納骨堂、永代供養墓、樹木葬など、墓地として許可された場所であれば何でも構いません。自宅に置く「手元供養」は埋葬ではないので、改葬許可証は不要ですが、いまの墓地から取り出すときに管理者の了解は必要です。
必要な書類は三つ
①受入証明書(使用許可証):移す先の墓地や納骨堂が「この遺骨を受け入れます」と証明する書類。契約すると発行されます。
②埋蔵証明書(埋葬証明書):いまのお墓の管理者(お寺の住職、霊園の管理事務所、自治体)が「この遺骨がここに納められています」と証明する書類。遺骨1体ごとに必要で、改葬許可申請書に署名・押印をもらう形になっている市区町村も多いです。
③改葬許可申請書:いまのお墓がある市区町村の役所でもらう用紙。亡くなった方の氏名、本籍、死亡年月日、埋葬した年月日、移す先などを書きます。市区町村のホームページからダウンロードできるところが増えています。
この三つをそろえて役所に出すと、改葬許可証が交付されます。手数料は無料から数百円が目安です。許可証は移す先に渡し、納骨のときに使います。
手続きの順番
①家族と親族に話す。②移す先を決めて契約し、受入証明書をもらう。③いまのお墓の管理者に改葬の意向を伝え、埋蔵証明書(または申請書への署名)をもらう。④役所に改葬許可申請書を出し、改葬許可証をもらう。⑤石材店に遺骨の取り出しと墓石の撤去を頼む(お寺なら閉眼供養をお願いする)。⑥遺骨を移す先に運び、改葬許可証を渡して納骨する。
順番で大事なのは、「移す先を先に決める」ことです。受入証明書がないと申請書が出せない市区町村が多く、先にお墓を片づけてしまうと遺骨の行き場がなくなります。
もう一つ、③を②より先に、少なくとも同時に始めてください。お寺に何も言わずに移す先と契約してから「出ます」と伝えるのは、関係をこじらせる一番の原因です。
費用の目安
役所の手数料:0〜数百円。
いまのお墓の撤去:墓石の撤去と更地にする工事で、1㎡あたり10万〜15万円。一般的な区画で20万〜50万円。山の上や車が入らない場所は人力になり、上がります。
お寺への閉眼供養のお布施:3万〜10万円。檀家を離れる場合の「離檀料」を求められることがあり、相場は3万〜20万円と言われますが、法律上の決まりはありません。
遺骨の取り出し:石材店の作業に含まれることが多く、別料金なら1体1万〜3万円。古い遺骨の洗浄や乾燥を頼むと1体1万〜3万円。
移す先の費用:合祀墓なら数万円から、新しいお墓を建てるなら100万円を超えます。
合計で、いちばん安い形(合祀墓へ)で30万〜50万円、新しいお墓を建てる形で150万円以上が目安です。
よくあるつまずき
遺骨の数が分からない:代々のお墓には何体入っているか記録がないことがあります。お寺の過去帳、墓誌(名前を刻んだ石)、カロート(納骨室)を開けての確認で数えます。埋蔵証明書は1体ごとなので、ここが最初の作業です。
名前が分からない遺骨がある:古い遺骨で誰のものか分からないと、申請書の氏名欄が書けません。「不詳」として受け付ける市区町村が多いので、役所に相談してください。
土葬だった:古いお墓では土葬のことがあります。この場合は遺骨を掘り出して火葬してから移すことになり、火葬許可も必要です。石材店と役所に先に伝えてください。
遺骨が水を含んでいる:カロートに水がたまり、骨壺の中が水浸しということがよくあります。移す先によっては乾燥や洗浄を求められます。
本籍や死亡年月日が分からない:申請書に書く欄があります。戸籍(除籍謄本)を取れば分かりますが、本籍地の役所に請求する必要があります。
管理者と連絡が取れない:お寺が無住になっている、管理者が代替わりして分からない、という場合は、墓地のある市区町村の担当課(環境衛生や生活衛生の課)に相談します。
遠方からでも進められます
改葬の手続きは、郵送で進められる部分がほとんどです。改葬許可申請書は郵送で出せる市区町村が多く、埋蔵証明書もお寺に郵送で署名を頼めます。石材店との打ち合わせも電話とメールで進み、現地に行くのは閉眼供養と遺骨の受け取りの日だけ、という方が多いです。
ただ、「いまお墓がどんな状態か」「墓誌に何人の名前があるか」が分からないと、申請書も見積もりも進みません。そこだけは、誰かが現地に行く必要があります。
つなぐのお参りでは
つなぐは広島県内のお墓へ伺い、清掃とお供えをしたうえで、ビデオ通話でご家族とご一緒にお参りする会社です。改葬を考えはじめたご家族には、まずいまのお墓をきれいにしてお参りし、墓誌に刻まれた名前や区画の様子を写真でお届けすることができます。「何人分の遺骨があるか」「石材店に見積もりを頼むときに見せる写真がほしい」という段階で、お役に立てます。手続きそのものはご家族と役所・お寺・石材店の間で進めることですが、「次に何をすればよいか」の整理はお手伝いできます。
よくある質問
問:改葬許可証は誰が申請しますか。——答:お墓の名義人(使用者)です。名義人が亡くなっている場合は、承継した人、または名義人の了解を得た親族が申請します。
問:一部の遺骨だけ移すことはできますか。——答:できます。移す分だけ埋蔵証明と改葬許可を取ります。残りはそのままお墓に残ります。
問:どのくらいの期間がかかりますか。——答:書類がそろえば役所の手続きは数日ですが、お寺との話し合い、石材店の予約、移す先の契約を含めると2〜3か月が目安です。お盆やお彼岸の前は石材店が混みます。
まとめ
改葬は遺骨を別の場所へ移すことで、市区町村の改葬許可証が要る。書類は受入証明書・埋蔵証明書・改葬許可申請書の三つ。順番は、家族と話す→移す先を決める→いまの管理者に伝える→役所→石材店→納骨。費用は30万円台から150万円以上まで。つまずきやすいのは遺骨の数と名前、土葬、水、本籍。手続きは郵送で進められるが、お墓の状態を見る人だけは必要。
改葬は、お墓を捨てることではなく、手を合わせる場所を次の世代が通える所へ移すことです。慌てずに、順番どおりに。