
2026.10.25 文・川崎 誠
「お墓のお供え物は何がいい?」の記事では、基本の五つと避けたいものを書きました。今日は、その中でも相談の多い「故人の好物」についてです。
お酒・ビール
缶や瓶のまま、水鉢の上や墓前の台に置くのがいちばん手軽です。お参りのあいだだけ供え、帰るときに持ち帰ります。
墓石にお酒をかけるのは、やめておきましょう。お酒の糖分やアルコールが石にしみて、変色やカビ、虫の原因になります。どうしてもかけたい気持ちがあるなら、ほんの少しを足元の土の部分に。そのあとは水で流しておくと安心です。
缶を開けて供える家もあります。開けると香りが立ち、故人に「どうぞ」と勧める気持ちになれます。ただ、開けた缶は持ち帰りにくいので、帰る前にその場で家族が分けていただく、という形が多いです。
甘い物・果物
和菓子や洋菓子は、包みのまま、半紙や懐紙を一枚敷いた上に置きます。直接石に置くと、油や砂糖のしみが残ります。
果物は、丸ごとのものが向いています。りんご、みかん、梨など。切ったものは汁が出て虫を呼ぶので、避けるか、容器に入れて。
夏場は、甘い物にすぐ蟻や蜂が寄ってきます。手を合わせる間だけ供え、必ず持ち帰ってください。
たばこ
たばこが好きだった方には、一本を香炉や線香立てのそばに置く、あるいは火をつけて線香のように立てる家もあります。
火をつける場合は、燃え残りと吸い殻を必ず持ち帰ってください。墓地によっては、火の扱いを線香だけに限っている所もあります。周りの区画への煙の流れにも気をつけて。
箱のまま供え、お参りのあとに持ち帰る形なら、どこの墓地でも問題になりません。
手作りの料理
おはぎやお赤飯、故人がよく作ってくれた料理を供えたい方もいます。小さめのタッパーや紙皿に少しだけ盛り、お参りのあいだだけ置きます。
生ものや汁気の多いものは、季節によっては傷みやすく、においで動物が来ることがあります。家の仏壇に供え、お墓には写真や話で伝える、という形もあります。
置いたままにしない理由
お供え物を置いたまま帰ると、カラスや猫、たぬきなどが荒らします。墓石や隣の区画まで汚れ、管理者から注意を受けることもあります。
多くの墓地では「お供え物はお持ち帰りください」と掲示しています。お供えは「供える行為」に意味があり、置き続けることに意味があるわけではありません。手を合わせたら、持ち帰る。それで十分に気持ちは届いています。
お下がりをいただく
持ち帰ったお供え物は「お下がり」として、家族でいただきます。故人と同じものを分け合う、という意味があり、捨てるより供養になると言われます。
お墓の前で、帰る前にみんなで少しずついただく家もあります。故人の好きだったビールを、墓前で一口ずつ。そういう時間も、お参りの一部です。
つなぐのお参りでは
つなぐは広島県内のお墓へ伺い、清掃とお供えをしたうえで、ビデオ通話でご家族とご一緒にお参りする会社です。ご家族から「父の好きだった銘柄を」「母の好物の和菓子を」とお聞きして、お花と一緒にお供えすることができます。お参りのあとは墓地の決まりにしたがって持ち帰り、置いたままにはしません。お供えの様子は写真でお届けします。
よくある質問
問:お酒は宗派的に問題ありませんか。——答:多くの宗派で、故人が好んだものを供えることに問題はありません。気になる場合はお寺に聞いてください。浄土真宗では、お供えは仏様への感謝として、故人への「飲食の提供」とは考えない、という説明をされることがあります。
問:缶を開けたまま置いて帰ってもいいですか。——答:避けてください。虫や動物が集まり、こぼれた中身が石にしみます。
問:お墓に行けないとき、好物はどうすれば。——答:家の仏壇や写真の前に供えて、手を合わせてください。それも立派なお供えです(「仏壇がない家のお彼岸」の記事)。
まとめ
故人の好物は、気持ちよく供えてよいもの。お酒は缶のまま置き、墓石にはかけない。甘い物は紙を敷いて、果物は丸ごと。たばこは火の始末と持ち帰りを。料理は少しだけ、短い時間。どれも、手を合わせたら持ち帰って、お下がりとして家族でいただく。
好物を供えると、自然と故人の話になります。その話の時間こそが、いちばんのお供えかもしれません。