
2026.09.27 文・川崎 誠
親を見送ったあと、四十九日や納骨が済んだころに、ふと気づく方が多いです。「このお墓、次は誰の名義になるんだろう」「管理費はどこに払っていたんだろう」。
この記事では、お墓の引き継ぎ(承継)の考え方と手続き、管理費、そして遠くに住む子どもがお参りをどう続けるかをまとめました。墓地ごとに決まりが違う部分は、必ず管理者に確認してください。
お墓は「相続」ではなく「承継」
お墓や仏壇、位牌は民法で「祭祀財産」とされ、預金や不動産の相続とは別に扱われます。相続税の対象にならず、遺産分割の話し合いで分ける対象でもありません。
引き継ぐのは原則一人です。決め方の順番は、①亡くなった方が指定していた人、②その地域や家の慣習、③家庭裁判所の判断。実際には、遺言や口約束、家族の話し合いで長男や同居していた子が引き継ぐことが多いですが、長男でなければならない決まりはありません。娘でも、遠方に住む子でも構いません。
承継者になると、お墓の名義人として、管理費の支払い、墓地の規約を守ること、次の承継者を決めることが役目になります。
手続き:墓地の管理者への届出
お墓の名義変更は、法務局ではなく「墓地の管理者」に届け出ます。お寺の墓地なら住職、公営墓地なら市区町村、民営霊園なら管理事務所です。
必要になることが多い書類は、名義変更の申請書(管理者の様式)、以前の名義人が亡くなったことが分かる書類(除籍謄本など)、新しい名義人との関係が分かる戸籍、新しい名義人の住民票と印鑑、そして「墓地使用許可証(永代使用許可証)」です。手数料は数百円から数千円が一般的で、民営霊園では1万円前後のところもあります。
使用許可証が見つからない場合は、管理者に「再発行はできますか」と聞けば、たいてい手続きがあります。実家の仏壇の引き出しや、親の大事な書類の箱に入っていることが多いです。
期限は法律では決まっていませんが、墓地の規約で「名義人の死亡から〇か月以内」と定めていることがあります。一周忌までには済ませておくと安心です。
管理費:どこに、いくら、いつ
管理費は墓地の共用部分(通路・水道・清掃・事務)の維持のためのお金で、年に一度払うのが一般的です。公営で数千円、民営霊園で5千円〜1万5千円ほど、お寺の墓地では「護持会費」という名前で似た性格のお金を納めます。
親が払っていたなら、通帳の引き落としや、管理者からの請求書のはがきで分かります。名義変更の届出をすると、翌年からは新しい名義人に請求が来ます。
管理費を長く滞納すると、規約により使用権が取り消され、最終的に無縁墓として整理されることがあります。3年、5年と期限を定めている墓地が多いです。払う人と払い方だけは、早めにはっきりさせておいてください。
遠方に住む子どもがお参りを続けるには
名義は引き継いだけれど、お墓は広島、自分は関東や関西。これはいま、いちばん多い形です。年に一度は帰る、と決めても、仕事や家族の事情で行けない年は必ず来ます。
現実的なのは、①年1回は自分で帰る日を決める(お盆か、命日か、年末か)、②間の時期は近くの親戚に掃除を頼むか、お寺に法要をお願いする、③どちらもない年は、代わりに行く人に頼んでビデオ通話でお参りする、という組み合わせです。
「誰も行けないお墓」が一番困ります。年に1回でも誰かが行っていれば、草は膝丈にならず、花立ても壊れず、隣のお墓にも迷惑がかかりません。行けない年をどうするかまで含めて、承継者が決めておくと気持ちが楽になります。
兄弟で先に話しておきたいこと
承継者は一人ですが、お参りや費用を一人で背負う決まりはありません。もめやすいのは「誰が名義人か」より「誰がお金と手間を出すか」です。
話しておくとよいのは三つ。管理費を誰がいくら負担するか。お盆やお彼岸に誰が行くか、行けないときはどうするか。将来、墓じまいや改葬を考えるとき、誰の同意で決めるか。
親が元気なうちに話せるのが一番ですが、亡くなったあとでも遅くありません。四十九日で集まったときに、10分だけこの話をしておく。それだけで、10年後がずいぶん違います。
つなぐのお参りでは
つなぐは広島県内のお墓へ伺い、清掃とお供えをしたうえで、ビデオ通話でご家族とご一緒にお参りする会社です。承継したものの遠方で通えない方、兄弟の間で「今年は誰が行く」が決まらない年の一回として、お使いいただけます。お参りのあとは、その日の写真と空をまとめた「お参りのご報告」をお届けします。名義の手続きや管理費のことは、墓地の管理者へのご確認が先ですが、「うちの墓地はどこに聞けばいいか分からない」という段階のご相談も、遠慮なくどうぞ。
よくある質問
問:長男以外が承継してもいいですか。——答:構いません。娘でも、次男でも、親族でなくても墓地の規約が認めれば承継できます。
問:名義変更をしないままだとどうなりますか。——答:すぐに問題は起きませんが、管理費の請求先が宙に浮き、滞納扱いになることがあります。いずれ墓じまいや改葬をするときにも、名義人が亡くなったままでは手続きが進みません。
問:承継者が決まらないときは。——答:家庭裁判所に「祭祀承継者の指定」を申し立てる方法があります。ただ、その前に家族で「管理費とお参りを誰がどうするか」から話す方が、たいていは早く決まります。
まとめ
お墓は祭祀財産として一人が承継する。手続きは墓地の管理者へ、除籍謄本・戸籍・住民票・使用許可証を持って。管理費は払う人と払い方を早めに決める。遠方なら「年1回は自分で、間は頼む」の組み合わせ。兄弟とは名義より「お金と手間」を先に話す。
名義は紙の話で、お墓を守るのは「誰が行くか」です。そこから決めれば、順番は自然に整います。