
2026.10.22 文・川崎 誠
「親が亡くなった後のお墓」の記事では、継ぐ人がいる前提で名義の引き継ぎを書きました。今日は、継ぐ人がいない、または継がせられないときの話です。選択肢は三つ。順番に見ていきます。
①親戚に託す
甥や姪、いとこ。血縁の近い人に承継を頼む形です。墓地の規則で「承継者は親族に限る」としていることが多いので、まず頼める親族がいるかを考えます。
頼むときに決めておくこと:管理費を誰が払うか(自分が生きている間は自分、亡くなった後は残したお金から、など)、お参りはどの程度期待するか(年に一度でよい、しなくてもよい)、いつか墓じまいしてもよいか。「名義だけ引き受けてもらい、お金は残しておく」という形なら、受けてもらいやすくなります。
頼む相手の側にも、自分の家のお墓があります。二つのお墓を見ることになる負担を、こちらが分かっていると伝えることが、話の入口です。
②いまのお墓に永代供養を付ける
お墓はそのままで、自分が亡くなった後の管理と供養をお寺や霊園に託す形です。「永代供養とは」の記事に書いたとおり、できる墓地とできない墓地があります。
できる場合は、契約して費用を納めれば、継ぐ人がいなくてもお墓は無縁にならず、一定期間ののち合祀に移ります。自分が元気なうちは、これまでどおりお参りできます。お墓を手放さず、先の心配だけなくす、という中間の形です。
お寺の墓地なら住職に、霊園なら管理事務所に「継ぐ人がいないので、永代供養を付けられますか」と聞くところから始まります。
③墓じまいして、合祀や納骨堂へ
お墓を片づけ、遺骨を永代供養墓・合祀墓・納骨堂・樹木葬へ移す形です。「墓じまいとは」「改葬とは」の記事に手順を書きました。
自分が元気なうちに行う墓じまいは、親戚との話し合いと費用の工面を自分でできるので、残された人に負担がかかりません。「自分で片づけてから逝く」と決める方は、年々増えています。
ただし、墓じまいのあとは「手を合わせる場所」が合祀墓や納骨堂に変わります。自分自身がどこに入りたいかと合わせて決めてください。
何もしないとどうなるか
名義人が亡くなり、管理費が止まり、連絡先が分からなくなると、墓地は無縁墓の手続きに入ります。官報と立札で1年待ったのち、遺骨は合祀され、墓石は撤去されます(「年間管理費とは」の記事)。
つまり、何もしなくても「いつか合祀」になります。違いは、自分で決めて穏やかに移すか、誰も知らないうちに片づけられるか、です。残された親戚に「あのお墓どうなった」と後から探される形は、いちばん避けたいところです。
話を切り出す時期と相手
時期は、元気なうち。病気になってから、入院してからでは、お寺や石材店との段取りがこなせません。60代、70代で一度考える方が多いです。
相手は、①頼む可能性のある親戚、②お寺か霊園の管理者、③自分の兄弟。この三者に「継ぐ人がいないので、こう考えている」と伝えます。親戚には「お願いします」ではなく、「こう考えているが、どう思うか」から入ると、相手も話しやすい。
決めたことは、紙に書いて残します。エンディングノートでも、便箋一枚でも。「お墓は◯◯に託す。管理費は◯◯から払う。それができなくなったら永代供養に」。一行ずつで十分です。
つなぐのお参りでは
つなぐは広島県内のお墓へ伺い、清掃とお供えをしたうえで、ビデオ通話でご家族とご一緒にお参りする会社です。継ぐ人がいないお墓を「自分が元気なうちは守る」と決めた方の、年に一度の掃除とお参りをお手伝いできます。また、親戚に託す話をする前に、お墓の今の状態を写真で整えておくこともできます。先の決め方はご本人とお寺・親戚の間のことですが、「今のお墓をきれいに保つ」ことは、どの選択肢を選んでも土台になります。
よくある質問
問:親戚に断られました。——答:②か③に進みます。断られたことは、相手の事情であって、こちらの落ち度ではありません。
問:永代供養を付けても、自分はこのお墓に入れますか。——答:多くの契約では、契約者本人の納骨まで含めて受けてくれます。「自分の納骨も含まれるか」を契約前に確かめてください。
問:費用はどのくらい残しておけばいいですか。——答:永代供養を付けるなら数十万円、墓じまいなら30万〜100万円が目安です。「お墓のためのお金」として分けておき、託す相手に伝えておくと安心です。
まとめ
継ぐ人がいないときの選択肢は、①親戚に託す、②いまのお墓に永代供養を付ける、③墓じまいして合祀や納骨堂へ。何もしなければ無縁墓を経て合祀になる。元気なうちに、親戚・お寺・兄弟に話し、紙に一行で残す。お金は分けておく。
継ぐ人がいないことは、珍しいことではなくなりました。決めて、書いて、伝える。それだけで、お墓は穏やかに次の形へ移れます。